高額寄附の申出を受けた団体は、入金や財産の引渡しを案内する前に、受け入れられる寄附かを確認します。紺綬褒章の金額基準に達していても、受入れも推薦も自動には決まりません。寄附目的、条件、財産、費用、寄附者との関係、公益団体の認定日を一件の記録へまとめ、自団体の規程に沿って受入れを決めます。
受入可否と紺綬褒章の推薦可否は、別々に決めます
受入可否は、団体がその寄附を受け取るかどうかの判断です。推薦可否は、その寄附について関係府省庁へ紺綬褒章の推薦手続を進められるかという別の判断です。
内閣府は、個人500万円以上、団体1,000万円以上を授与基準としています。個人には紺綬褒章、団体には褒状が授与されます。
対象となる寄附先は、国、地方公共団体、または内閣府賞勲局が認定した公益団体です。実際の授与には、各府省等からの推薦と内閣府の審査があります。
この説明は、各団体に寄附を受け入れる義務を定めたものではありません。国立公文書館は、目的が館の業務に合い、事業に支障がない寄附を受け入れると規程に定めています。申出を受けた後に受入れまたは辞退を決め、通知する手順も設けています。
全国共通に確認できるのは、紺綬褒章の金額、対象寄附先、推薦・審査、返礼品の扱いです。受入審査の細部を定めた全国一律の項目表は、今回確認した公式資料にはありません。以下では、複数の公式規程に見られる共通点と、特定団体だけの運用を分けて示します。
寄附目的は、団体が実行できる使途へ結び付けます
寄附の目的が定款や設置法に基づく仕事に合わなければ、金額が大きくても受入れを進められません。団体名だけで判断せず、どの事業に、何のために使う寄附かを申込書へ記載します。
使途を指定することと、寄附者が団体の仕事を支配することは同じではありません。北海道大学は、学術研究の指定や研究結果の簡単な報告などを、受け入れられる条件として挙げています。これは北海道大学の規則であり、他団体に同じ条件が当てはまるという意味ではありません。
一方、国立公文書館、国立がん研究センター、国立健康危機管理研究機構などの規程には、寄附者による会計検査や任意の取消しを受け入れない記載があります。財産や研究成果から生じた知的財産を寄附者へ戻す条件を認めない例もあります。
使途を指定して受け入れるときは、対象事業、使用できる費目、報告の範囲を文書で合わせます。事業が終わった後の残額や、予定した事業を続けられない場合の変更方法も決めておきます。
反対給付と広報条件は、名前ではなく内容で見分けます
反対給付とは、寄附の見返りとして財産、サービス、便宜などを渡すことです。複数の独立行政法人や国立研究開発法人の規程は、反対給付を求める寄附を受け入れないとしています。
内閣府は、地方公共団体等への寄附で寄附者が返礼品を受けた場合は、記念品の類を除き紺綬褒章の対象にならないと説明しています。そのため、商品、サービス、施設の優先利用などを条件とする申出は、見返りのない寄附と同じものとして扱えません。
寄附者名の掲載や謝意の表示を行う団体もあります。国際協力機構は、寄附者が希望する場合に寄附者情報を公表できると規程に定めています。これは同機構の運用例であり、広告枠の提供まで一律に認める説明ではありません。
広告掲載を約束する場合は、単なる氏名掲載と分け、対価を伴う取引かを会計・法務担当へ確認します。国税庁は法人税上、名称にかかわらず、事業と直接関係する広告宣伝費などは寄附金の範囲から外れると説明しています。この説明は寄附者側の税務に関するもので、紺綬褒章の対象を直接決める資料ではありません。
広告、命名、謝意表示が紺綬褒章の返礼品に当たるかは、内閣府の概要だけでは個別に決められません。提供する内容と条件を記録し、受領前に関係府省庁へ確認します。
現金以外の財産は、権利書類と受入れ後の負担を先に見ます
現物寄附は、現金ではなく、物品、不動産、有価証券などの財産を渡す寄附です。団体が利用できない財産や、維持できない財産は、評価額が高くても負担になる場合があります。
内閣府公益認定等委員会の会計指針は、公益法人が物資の現物寄附を受ける場合の考え方を示しています。利用または換金ができ、組織目的の達成に役立つことを確かめます。権利や内容を示す書類を受け取り、受入れを承諾した時点で、公正な評価額による収益として会計に記録します。
この指針は、2025年4月1日以後に始まる事業年度から適用されます。ただし、2028年4月1日前に始まる事業年度までは、従前の会計基準を使える経過措置があります。自団体が使う会計基準を、会計担当へ確認してください。
お茶の水女子大学は、不動産と動産について、教育研究や事業運営に支障がないかを審査し、申出書を基に受入れを決めています。国立健康危機管理研究機構の申込書は、寄附金品の名称、数量、価格、目的、予定日を記載する形です。どちらも団体固有の手続ですが、現金額だけでは審査できないことが分かります。
権利書類、評価の根拠、引渡し方法に加え、保管、登記、保険、修繕、換金、処分などに必要な費用を見積もります。第三者の権利が関係する財産は、弁護士などの専門家へ確認します。
国際協力機構、国立がん研究センター、国立健康危機管理研究機構などは、新たな債務や過度な支出が生じる寄附を受け入れない旨を定めています。費用の大きさを判断する全国共通の金額はなく、自団体の財務状況に照らして決めます。
管理費の扱いも団体ごとに異なります。国立健康危機管理研究機構は、目的を指定した寄附金から原則20%の管理費を徴収すると規程に定めています。これは同機構だけの率です。寄附全額を指定事業へ使えると説明する前に、自団体の管理費規程を確認してください。
会計上の評価額が、そのまま紺綬褒章の金額確認に使われるとは限りません。現物資産を含む場合は、推薦府省庁に評価資料と確認方法を尋ねます。
寄附者との関係は、信用と利益相反の両面から確認します
高額寄附では、寄附者の氏名または法人の正式名称、所在地、連絡先、代表者を申込書で確認します。寄附者名を公表するかどうかも、本人の希望を記録します。
国立がん研究センター、国立健康危機管理研究機構、国際協力機構は、反社会的勢力からの寄附を受け入れない旨を公式規程や確認事項に定めています。国立健康危機管理研究機構は、寄附者の社会的な立場や信用に問題がある場合も受け入れないとしています。
利益相反とは、寄附者との関係が、団体の公正な判断に影響したように見える状態を含みます。三重大学は、高額な寄附や特定企業に偏った寄附が、教職員と企業の関係への疑念につながる場合があると説明しています。同大学では、企業等から30万円以上を受け入れる際に自己申告書を求めています。
30万円という額は三重大学だけの運用です。すべての団体に同じ基準があるわけではありません。自団体の利益相反規程に従い、寄附者と役員・担当者の関係、審査へ参加した人、決裁の経過を残します。
高額寄附だけの審査基準は、各団体の規程で確かめます
寄附額が大きい場合に、通常とは別の審査を行う団体があります。金額基準と決裁機関は全国一律ではありません。
国立健康危機管理研究機構は、1,000万円を超える寄附について、外部資金受入審査会を経て理事長が受入れを決めるとしています。物品の場合は、寄附書を受理した時点の時価を同機構の審査基準に用います。これは同機構固有の規程です。
自団体では、理事会、評議員会、審査会、代表理事など、誰に決定権があるかを規程で確かめます。使途を限定した寄附や現物資産について別の決裁が必要かも確認します。
申込書だけを受け取り、決裁前に振込先を案内しない手順も大切です。北海道大学は、学内手続の後に振込依頼書を送ると案内しています。国立公文書館も、受入決定後に通知書を送る手順を設けています。
公益団体の認定日と寄附予定日を照合します
公益法人であっても、それだけで紺綬褒章の対象寄附先になるわけではありません。関係府省庁の推薦を経て、内閣府賞勲局から公益団体として認定される必要があります。
内閣府が公開する認定団体一覧は、2026年7月14日の確認時点で「令和8年6月24日現在」と記載されています。受入れを決める日には、最新の一覧を開き直してください。
認定日も寄附予定日と照合します。新国立劇場運営財団は、2026年3月19日に認定を受け、同日以後の寄附を制度の対象と案内しています。これは同財団の公式案内であり、すべての団体の認定日前後や分納の扱いを決める全国共通資料ではありません。
一覧への掲載が確認できても、受入れ、推薦、受章が決まるわけではありません。寄附額、寄附日、返礼品、分納などを整理し、関係の深い府省庁へ確認します。都道府県が公益認定した法人については、内閣府の案内では都道府県を経由して公益団体認定の手続を行うとされています。
内閣府は、公益団体であることを寄附金の募集手段として広報宣伝しないよう案内しています。認定を受けた団体も、紺綬褒章を寄附募集の約束として用いないよう注意が必要です。
決裁書には、受入判断と未確認事項を分けて残します
受入れを決める資料は、申込書の写しだけで終わらせません。どの規程に基づき、誰が何を確認し、何が未確認かを一件ごとに残します。
少なくとも、次の内容を同じ記録で確認します。
- 寄附者の正式名称、連絡先、代表者、公表希望
- 寄附の目的、使途、報告範囲、残額と使途変更の扱い
- 金額、財産の種類、数量、予定日、分納の有無
- 取消し、会計検査、広告、命名、便宜、その他の見返り
- 現物資産の権利書類、評価根拠、引渡し方法、受入れ後の費用
- 反社会的勢力と信用の確認、役員・担当者との利益相反
- 適用する受入規程、決裁権者、審査会や理事会の決定日
- 公益団体一覧の基準日、団体の認定日、推薦府省庁への確認状況
記録の結論は、「寄附を受け入れるか」と「紺綬褒章の推薦を相談できるか」を別の欄にします。推薦の確認が終わっていなくても受入れられる場合や、受入れられても推薦の前提を満たさない場合があるためです。
次に行うことは、財産を受領する前に、最新の受入規程と申込書を使ってこの一件記録を作ることです。紺綬褒章の希望がある場合は、記録を関係府省庁へ示し、未確認事項への回答を受けてから寄附者へ案内します。
公式情報の出典
制度事実と受入実務の記載は、次の公式情報を2026年7月14日に確認しました。各団体の規程は、その団体だけに適用される運用例です。
- 内閣府「勲章・褒章制度の概要」
- 内閣府「紺綬褒章『公益団体』として認定する団体一覧」
- 内閣府「紺綬褒章 公益団体認定制度のご案内」
- 内閣府公益認定等委員会「公益法人会計基準の運用指針」
- 国立公文書館「寄附金及び寄附物品の受入れに関する規程」
- 国立がん研究センター「ご寄付にあたって(寄付取扱規程等)」
- 国立健康危機管理研究機構「寄附受入規程」
- 国際協力機構「寄附金の受入れ及び執行に関する取扱細則」
- 北海道大学「寄附金」
- お茶の水女子大学「寄附資産受入規程」
- 三重大学「寄附金を受け入れるとき」
- 国税庁「No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算」
- 新国立劇場「国の褒章制度(紺綬褒章)の公益団体認定について」