不動産や株式などを寄附するときは、財産を移す前に三つの判断を分けてください。最初は、受入先がその財産を受け取れるかという判断です。次に、紺綬褒章の手続で寄附額をどの資料から確認するかを確かめます。税務上は、譲渡所得が生じるか、非課税の承認申請を検討するかを別に確認します。
現物資産は、現金と同じ申込方法で渡せるとは限りません
現物寄附とは、現金ではなく、不動産や株式などの財産をそのまま渡す寄附です。受入先が寄附金を募集していても、すべての財産を受け取れるわけではありません。
東京大学では、不動産による寄附の受入れを、役員会の議を経て総長が決めます。株式等以外の有価証券は、受領後、適切な換金性が確保された時点で速やかに換金すると定めています。お茶の水女子大学は、大学の教育研究や事業運営に支障がないことなどを寄附資産の受入要件としています。
東北大学基金は、不動産や有価証券の相談を受け付けています。一方、学内で活用しにくい場合や、維持管理費が上回る場合は受け取れないことがあると案内しています。これらは各大学の運用例であり、全国共通の受入条件ではありません。
受入先へは、資産の明細と負担を移転前に伝えます
財産名だけでは、受入可否を判断できません。受入先には、権利関係と将来の負担も含めて伝える必要があります。
不動産なら、所在地、面積、用途、名義、共有持分、担保、賃貸借、境界、維持費などを整理します。株式なら、銘柄、数量、上場・非上場の別、名義、取得時期、取得価額を確認します。美術品や貴金属では、所有を示す資料、鑑定書、保管や運搬にかかる費用も確認対象です。
受入先には、財産をそのまま使うのか、売却して現金化するのかも尋ねてください。名義変更費用、鑑定費用、売却費用を誰が負担するかについても、書面で回答を受けます。受入決定前に登記や名義変更を進めないことが大切です。
紺綬褒章の評価額は、受入可否とは別に確認します
物件による寄附も、紺綬褒章の対象になり得る公式例があります。ただし、受入先が財産を受け取ることと、褒章手続で基準額以上と確認されることは同じ判断ではありません。
北海道の案内は、現金または基準額以上と評価された物件を対象として示しています。宇都宮大学の現行の申合せは、文部科学省の事務連絡に基づく学内例として、物品、美術品、有価証券、不動産なども対象となる寄附に含めています。
これは地方公共団体と国立大学の公表例です。すべての受入先で同じ財産を扱うとは限りません。誰が評価するのか、いつの価額を使うのか、どの資料を提出するのかを受入先へ確認してください。
褒章手続で確認する評価額と、税務で使う寄附時の時価は、同じ目的の金額ではありません。根拠資料も同じとは限らないため、一つの評価額をそのまま両方に使えるとは考えず、それぞれの確認先へ尋ねてください。
個人は500万円以上が授与基準ですが、評価額が基準以上なら受章が決まるわけではありません。対象となる寄附先への寄附に加え、関係府省などからの推薦と内閣府の審査があります。
個人が法人へ財産を寄附すると、みなし譲渡が原則です
みなし譲渡とは、売却していなくても、税務上は時価で譲渡したものとして扱うことです。国税庁は、個人が法人へ財産を寄附した場合、原則として時価で譲渡したものとみなすと案内しています。
購入時より値上がりした不動産や株式では、寄附者が代金を受け取らなくても、値上がり益に譲渡所得が生じる場合があります。取得価額が分からない財産や、相続で取得した財産では、確認する資料も変わります。寄附金控除だけを見て判断せず、譲渡所得を別に確かめてください。
国や地方公共団体へ財産を寄附した場合は、国税庁の案内上、譲渡所得が課税されず、この取扱いを受けるための特別な手続も不要です。公益を目的とする事業を行う法人への寄附では、一定の要件を満たし、国税庁長官の承認を受けた場合に非課税となる仕組みがあります。寄附先の名称だけで、どちらに当たるかを決めることはできません。
租税特別措置法第40条は、自動的な非課税ではありません
租税特別措置法第40条は、公益法人等へ財産を寄附した場合に、譲渡所得等の非課税承認を申請する根拠です。公益法人等が受け取れば自動的に適用される制度ではありません。
国税庁の2026年7月14日現在の手続案内では、承認申請は原則として寄附の日から4か月以内です。ただし、その4か月が過ぎる前に、寄附した年分の所得税の確定申告期限が来る場合は、その申告期限までです。国税庁は、11月16日から12月31日までの寄附を、この取扱いに当たる場合として案内しています。申請先は、寄附者の所得税の納税地を所轄する税務署です。
制度には一般特例と承認特例があり、寄附先や財産によって使用する様式が異なります。一般特例では、寄附財産を原則として2年以内に公益目的事業へ直接使うことが、承認要件の一つです。
期限内に使われない場合や、使い始めた後に公益目的事業へ直接使われなくなる場合などは、承認が取り消されることがあります。取消しの理由によっては、寄附者または受入法人に所得税が課されます。適用の可否、申請期限、承認後の取扱いは、税務署または税理士へ個別に確認してください。
申請書類は、受入先と一緒に準備するものがあります
承認申請は、寄附者だけで完結する書類ではありません。国税庁は、財産を取得する法人が申請内容を確認した書面などを添付書類として案内しています。
国税庁の現行手引には、寄附申込書の写しや、受入決定を記した理事会等の議事録が挙げられています。時価と取得価額を示す資料も必要になります。不動産では受入法人へ所有権を移した後の登記事項証明書など、株式では受入法人へ名義変更したことが分かる資料などが例示されています。
書類の中には、寄附後でなければ取得できないものもあります。しかし、受入先が作成する書類や、寄附者が保存しておく取得資料は、先に確認できます。寄附日を決める前に、受入先と税理士の双方から必要資料の一覧を受け取ってください。
同じ資産明細を、受入先と税務の専門窓口へ渡します
確認を始めるときは、受入先用と税務用で異なる説明を作らないことが大切です。同じ資産明細を使えば、名義、数量、評価日などの食い違いに気づきやすくなります。
明細には、財産の種類、所在地や銘柄、数量、名義、取得時期、取得価額、現在の評価資料、権利や債務を記載します。受入先には、受入可否、利用・換価方法、費用、紺綬褒章の推薦相談と評価資料を尋ねます。税務署または税理士には、みなし譲渡、租税特別措置法第40条、申請期限と添付書類を尋ねてください。
受入先の承諾、紺綬褒章の評価資料、税務上の承認は別々の手続です。三つの回答がそろってから、名義変更や引渡しの日を決めてください。
公式情報と確認日
税務の様式や受入先の規程は改定されます。財産を移す前に、最新の案内を再確認してください。
- 国税庁 No.3108「国や地方公共団体又は公益を目的とする事業を行う法人に財産を寄附したとき」(確認日:2026年7月14日、令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 A4-12「租税特別措置法第40条の規定による承認申請(公益法人等用)」(確認日:2026年7月14日)
- 国税庁「公益法人等に財産を寄附した場合における『租税特別措置法第40条の規定による承認申請書』の記載のしかた」(確認日:2026年7月14日、令和8年7月1日現在法令等)
- 内閣府「勲章・褒章制度の概要」(確認日:2026年7月14日)
- 北海道「寄附者に対する紺綬褒章の授与について」(確認日:2026年7月14日)
- 宇都宮大学「宇都宮大学における紺綬褒章の申請に関する申合せ」(確認日:2026年7月14日、令和7年4月1日施行)
- 東京大学「寄附取扱規則」(確認日:2026年7月14日)
- お茶の水女子大学「寄附資産受入規程」(確認日:2026年7月14日)
- 東北大学基金「現物寄附について」(確認日:2026年7月14日)
現物資産を渡す前の一般的な確認項目は、500万円以上の寄附を送金する前に確認することでも整理しています。