相続人がいったん取得した財産を寄附する場合は、故人の遺贈ではなく、相続人自身の寄附です。相続税の特例を受けるには、相続税の申告期限までに寄附先へ財産を渡すことが要件の一つです。財産を移す前に、寄附予定先と税務署または税理士へ同じ資料を示し、受入可否、期限、必要書類を確かめてください。

遺贈と相続後の寄附は、財産を渡す人が違います

故人が遺言で寄附先を指定し、その遺言に基づいて財産を渡すのが遺贈です。いったん相続人が財産を取得し、その後に自分の判断で寄附する場合は、相続人自身の寄附です。

この違いは、紺綬褒章について誰の寄附として確認するかにも関係します。東北大学と日本ユニセフ協会の公式案内は、遺贈を遺族追賞の対象になり得る寄附として説明しています。遺族追賞は、表彰されるべき方が亡くなっている場合に、遺族へ杯または褒状を授与する仕組みです。

一方、二つの案内は、相続人が受け取った財産を自分の判断で寄附する場合を、相続人本人の寄附として扱っています。遺族追賞とは別の扱いです。この区別は二つの受入先で確認できた案内であり、全国共通の推薦書類を示すものではありません。寄附先ごとの取扱いは、寄附前にその団体へ確認する必要があります。

相続人が個人として500万円以上を寄附しても、それだけで受章が決まるわけではありません。寄附先が制度上の対象に当たることに加え、関係府省等の推薦と内閣府の審査があります。

相続税特例では、相談開始日より寄附の完了日が重要です

国税庁が案内する特例では、相続または遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限までに一定の寄附先へ渡す必要があります。期限までに相談を始めるだけでは足りません。

通常の相続税申告期限は、被相続人(亡くなった方)の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。寄附を考え始めた日から10か月ではありません。個別の起算日や期限の扱いは、税務署または税理士へ確認してください。

不動産や株式を現物で寄附する場合は、受入先が受け取れるかを確かめる時間が必要です。財産によっては、受入審査や名義変更に時間がかかります。証明書の発行時期も寄附先で異なるため、必要な日数を確かめてください。

申告期限までの寄附は、特例の要件の一つにすぎません。寄附先の区分など、ほかの条件もあります。期限だけを見て適用できると判断せず、財産を動かす前に個別の条件を照合してください。

紺綬褒章と相続税特例では、寄附先の区分が別です

紺綬褒章の対象となる寄附先と、相続税特例の対象となる寄附先は、別の制度で決まります。一方の一覧に名称があっても、もう一方の制度にそのまま当てはまるとはいえません。

紺綬褒章では、国、地方公共団体、内閣府が認定した公益団体への寄附が対象として示されています。相続税特例では、国税庁が国や地方公共団体などへの寄附について要件を示しています。対象には、特定の公益法人(相続税特例で定められた法人)なども含まれます。

「内閣府の認定公益団体一覧に載っているから、相続税特例も使える」とは判断できません。反対に、税法上の対象法人だから紺綬褒章の対象になるとも限りません。

寄附予定先には、二つの制度を分けて尋ねます。まず、寄附を受け取る法人の正式名称を確認します。紺綬褒章では、どの寄附先区分として扱われるかを尋ねます。相続税特例では、どの対象区分に当たり、どの書類を発行できるかを確かめてください。

第14表と受入先の書類を、寄附前に確認します

相続税特例を受けるには、寄附を終えるだけでなく、申告書へ必要な明細と証明書類を添える必要があります。国税庁は、相続税申告書の第14表と、寄附先が発行する書類などを挙げています。

第14表は、相続財産の寄附などの明細を書く表です。この表だけで申告が完了するわけではありません。寄附を受けた日、財産の明細、財産の使用目的などが記載された受入先の書類も確認します。

一般の受領書だけで足りるとは限りません。書類の名称、記載される項目、発行できる時期を寄附予定先へ尋ねてください。申告に必要な書類一式は、税務署または税理士へ確認します。

現物のまま渡すか、売却後の現金を渡すかは別に考えます

相続した不動産や株式を売ってから現金を寄附しても、元の相続財産をそのまま寄附した場合と同じ扱いになるとは限りません。受入先の都合だけで売却を決めず、税務上の違いを先に確認してください。

現物の受入可否は、寄附先ごとの判断です。京都大学の公式案内は、遺言による寄附と相続財産からの寄附を別の方法として示しています。現金以外の寄附については、事前相談を案内しています。この案内は京都大学の運用例であり、ほかの受入先へそのまま当てはめることはできません。

売却する場合は、売却時の所得税についても確認が必要です。相続税特例の対象となる財産の考え方も、個別の事実によって変わります。共有、債務、評価方法が関わる財産は、受入可否や税務上の扱いを個別に確認してください。

故人の申込みがあっても、実際の支払者を確認します

故人が生前に寄附を申し込んでいた場合も、誰の寄附になるかを申込者の名前だけで判断しないでください。寄附金を支払う前に亡くなり、相続人が支払った場合を扱う国税庁の質疑があります。

その質疑では、所得税の寄附金控除を受けられるのは、実際に寄附金を支払った相続人としています。故人に寄附の意思があったことと、税法上誰が支出したかは分けて考える必要があります。

これは、記載された事実関係に基づく所得税上の回答です。相続税特例や紺綬褒章の取扱いまで一律に決める資料ではありません。故人の申込書や未払いの約束が残っている場合は、その資料も寄附予定先と税務署または税理士へ見せてください。

同じ一枚の相談メモを、二つの窓口へ示してください

最初の行動は、相続税申告期限を確認し、財産を移す前に寄附予定先と税務署または税理士へ同じ情報を示すことです。別々の説明をすると、法人名、財産の状態、期限の前提がずれるおそれがあります。

相談メモには、次の事項を一枚にまとめます。

  • 被相続人が亡くなった日と、自分が死亡を知った日
  • 遺言の有無と、自分が財産を取得した経緯
  • 寄附したい財産の名称、種類、概算額
  • 共有や債務の有無など、財産の状態
  • 寄附予定先の正式名称と担当窓口
  • 現物で渡したいのか、売却後の現金を渡したいのか
  • 分かっている相続税申告期限と、希望する寄附時期

寄附予定先へ尋ねること

寄附予定先には、受入可否と必要な日数を先に尋ねます。紺綬褒章と相続税特例は、別の質問として確認してください。

  • この財産を現物で受け取れるか
  • 寄附を受け取る法人の正式名称は何か
  • 申込みから受領までに、どの審査と書類が必要か
  • 相続税特例に使う証明書を発行できるか
  • 紺綬褒章では、どの寄附先区分として扱われるか
  • 推薦の取扱い、必要書類、確認窓口はどこか

推薦の可否や時期は、受入先や所管府省の確認が必要です。寄附者が内閣府へ直接申請する制度ではなく、推薦や審査結果を事前に確約することもできません。

税務署または税理士へ尋ねること

税務の窓口には、期限と特例の適用可否を尋ねます。寄附先から受け取る予定の書類名も伝えると、確認の前提をそろえやすくなります。

  • 自分の場合の相続税申告期限はいつか
  • 寄附先と財産が相続税特例の要件に当たるか
  • 現物の寄附と、売却後の現金の寄附で何が変わるか
  • 第14表のほかに、どの申告書類と証明書が必要か
  • 売却する場合、所得税上どの確認が必要か

寄附金税制の確認先では、紺綬褒章の基準と税務を分けて確認する窓口を案内しています。期限が近い場合は、寄附先からの回答を待つだけにせず、税務署または税理士にも現在地を伝えてください。

公式情報

この記事の制度情報は、2026年7月14日に次の公式資料で確認しました。個別の財産、期限、税務特例、推薦の取扱いは、寄附予定先、税務署または税理士へ確認してください。