法人が1,000万円以上を寄附するときは、紺綬褒章の基準と法人税の扱いを分けて確認します。紺綬褒章の対象となり得る寄附でも、全額を損金にできるかは別の判断です。損金算入とは、法人税の所得計算で費用として扱うことです。
1,000万円の基準は、法人税の区分を決めません
内閣府は、公益のために私財を寄附した団体について、1,000万円以上を基準としています。対象は、国、地方公共団体、または内閣府賞勲局が認定した公益団体への寄附です。
ただし、この基準は紺綬褒章の制度上のものです。各府省等からの推薦と、内閣府の審査もあります。1,000万円以上を寄附すれば、表彰が自動的に決まるという意味ではありません。
法人税では、別の基準で寄附金を区分します。内閣府賞勲局の「認定公益団体」と、法人税上の「特定公益増進法人」は別の制度です。内閣府の一覧に載っていることだけでは、法人税上の区分や損金算入額は決まりません。
二つの制度で同じ寄附先が対象になることはあります。それでも、紺綬褒章の確認資料を、法人税上の証明としてそのまま使わないことが大切です。
法人税では、寄附先と寄附の使途を区分します
国税庁は、法人が支出した寄附金を支出先などに応じて分けています。「寄附」という呼び名だけでなく、支出の実態を見て判定します。次の表は、この記事で扱う五つの区分を同じ順序で比べるために使います。
| 法人税上の区分 | 国税庁が示す扱いの大枠 | 支払前に確かめること |
|---|---|---|
| 国・地方公共団体への寄附 | 原則として支払額の全額を損金算入 | 正式な受入先名、使途、受領書の発行方法 |
| 指定寄附金 | 原則として支払額の全額を損金算入 | 財務大臣の指定、告示番号、指定の範囲や期間 |
| 特定公益増進法人への寄附 | 適用対象となる法人では、一般の寄附金とは別枠の限度額を適用 | 寄附先の該当性、主たる目的の業務との関係を証する書類 |
| 認定NPO法人等への寄附 | 適用対象となる法人では、特定公益増進法人と合わせて別枠の限度額を適用 | 現在の認定状況、特定非営利活動との関係を証する書類 |
| 一般の寄附金 | 一般の損金算入限度額を適用 | 他の区分に当たる根拠と、自社に適用される限度額 |
国等への寄附と指定寄附金は、国税庁が原則として全額を損金に算入すると示す区分です。それ以外の区分は、寄附先の名称だけで全額か一部かを決められません。実際の限度額は、自社の法人区分や所得などを基に確認します。
指定寄附金は、寄附先の法人全体に付く呼び名ではありません。財務大臣が一定の要件を満たすものとして指定した寄附です。団体名だけで判断せず、今回の寄附が指定の範囲に入るかを確かめます。
法人格だけでなく、寄附の目的まで確かめます
特定公益増進法人とは、公益の増進に著しく寄与するものとして法人税法上定められた法人です。公益社団法人や公益財団法人などが含まれます。ただし、別枠の扱いには、寄附がその法人の主たる目的である業務に関連することも必要です。
認定NPO法人等とは、所轄庁の認定または特例認定を受けたNPO法人です。寄附時点の認定状況を確かめます。寄附が特定非営利活動に関する事業に関連するかも確認します。
受領書に法人名と金額が書かれているだけでは、事業との関係まで証明できない場合があります。国税庁は、寄附先がその関係を証した書類を、寄附した法人が保存するよう求めています。
寄附先へは、法人税上どの区分として案内しているかを尋ねてください。あわせて、どの証明書を発行できるかも確認します。最終的な税務判断は、その回答と寄附の使途を税務署または税理士へ示して行います。
寄附金になる時期は、現実に支払ったときです
法人税上の寄附金は、帳簿の科目だけでは決まりません。国税庁は、現実に金銭などで支払った時に、寄附金を支出したものとしています。
社内で寄附を決議しても、未払のままなら支出した寄附金には含まれません。手形で支払っても、まだ決済されていないものは同じ扱いです。一方、仮払寄附金として実際に支払ったものは寄附金に含まれます。
決算日が近い場合は、決裁日と支払日を分けて記録してください。どの事業年度で扱うかを、支払方法とともに税務署または税理士へ確認します。
会社の寄附か、役員個人の負担かも分けます
会社名義で支払えば、すべて会社の寄附金になるわけではありません。国税庁は、役員等が個人として負担すべき性格の支出を会社が負担した場合、その役員等への給与として扱うと示しています。
役員が寄附先を選んだことだけで、直ちに給与となるわけではありません。問題になるのは、支出の性格です。会社として寄附する目的と、社内で意思決定した経緯を明確にします。
社内決裁書、振込記録、受領書を保管し、誰が何の目的で支払ったかを説明できるようにします。書類の名義を法人にそろえるだけで、税務上の判定が決まるわけではありません。
別表十四(二)のために、支払前から記録を残します
寄附金の損金算入を申告するときは、明細書として別表十四(二)を使います。国税庁は、令和8年4月1日以後終了事業年度分の様式を公開しています。
この様式には、区分に応じて、寄附した日、寄附先、所在地、使途、寄附金額などを記す欄があります。指定寄附金の明細には、告示番号を記す欄もあります。申込時から同じ内容で記録すると、支払後の確認がしやすくなります。
特定公益増進法人への寄附と認定NPO法人等への寄附では、別表十四(二)を確定申告書に添付します。寄附先が事業との関係を証した書類は、寄附した法人が保存します。必要な書類は、受領書という名称だけで判断せず、記載内容を確認してください。
別表の様式は、事業年度によって変わることがあります。今回確認した版は、令和8年4月1日以後に終了する事業年度用です。申告時には、自社の事業年度に合う版を国税庁のページで確かめます。
支払前に、税務確認用の一枚を作ります
社内決裁の前に、寄附の事実を一枚へまとめます。税額を自社だけで決める資料ではなく、寄附先と税務の専門窓口へ同じ条件を伝えるための確認票です。
- 寄附する法人の正式名称
- 寄附先の正式名称と所在地
- 寄附額、使途、支払方法、支払予定日
- 寄附先が案内する法人税上の区分
- その区分を示す告示、認定、証明書の名称
- 寄附申込書、社内決裁、受領書で使う名義
この一枚と寄附先からの回答を、税務署または税理士へ示してください。確認するのは、自社に適用する区分、損金算入の時期、必要な別表と保存書類です。税額や限度額は、法人の種類、資本金等、所得、事業年度によって変わります。
公式情報の出典
制度と法人税の記載は、次の公式情報を2026年7月14日に確認しました。国税庁のタックスアンサーは令和7年4月1日現在法令等、別表十四(二)は令和8年4月1日以後終了事業年度分です。申告時には、自社の事業年度に合う現行資料を再確認してください。