最初に見るのは、黒字か赤字かではありません。事業報告と財務資料が同じ年度で、同じ法人・基金・事業を示しているかを確かめます。法人全体の決算と一つの基金の累計収支は、同じ数字として比べられないからです。

表紙と日付で「同じ年度・同じ対象」をそろえる

候補団体との面談前には、資料の表紙と日付から読み始めます。書類名、対象期間、作成した法人名を書き留めてください。

同じ団体の資料でも、法人全体の決算、特定の基金の報告、個別事業の報告では対象が異なります。直近一年の数字と、基金を設けてからの累計額も分けて扱います。

候補団体をまだ絞っていない場合は、先に高額寄附の寄附先を公的情報と実績から見極める手順で全体の確認順序をご覧ください。この記事では、候補を絞った後に公開資料から面談の質問を作るところだけを扱います。

事業報告では、予定ではなく実際に行ったことを見る

事業報告書は、その年度に何を行ったかをまとめた資料です。これから行う内容を示す事業計画書とは役割が異なります。

支援したい課題に関係するページを探し、誰に、どこで、何を、どの程度行ったかを読みます。前年度から活動量が変わっていれば、その理由が説明されているかも確認します。

人数や実施回数が多いだけで、事業の成果が高いとは決められません。希望する事業の説明が見つからない場合は、名称が変わったのか、別の事業に含まれるのかを面談で尋ねる材料にします。

収益と費用の書類で、その年度の動きを見る

次に、その年度の収益と費用を示す書類を見ます。決算日に銀行口座へ残っている現金ではなく、一定期間の収益と費用、その結果としての純資産の変化を読むための書類です。

NPO法人の資料では「活動計算書」を探します。公益法人でも、令和6年公益法人会計基準による資料では「活動計算書」と呼びます。一方、旧基準を使う公益法人の資料では「正味財産増減計算書」という名称が使われます。

同じ「活動計算書」という名前でも、NPO法人と公益法人では根拠と様式が同じとは限りません。新基準の活動計算書と旧基準の正味財産増減計算書も、役割は近いものの、表示区分まで同一ではありません。

令和6年公益法人会計基準は、2025年4月1日以後に始まる事業年度から適用されます。ただし、2028年4月1日前に始まる事業年度には従来の基準も使えるため、新旧の書類名が併存します。名称だけで判断せず、注記にある採用基準も確かめてください。

寄附金の受入額、希望事業に関係する費用、前年度から大きく変わった項目を探します。単年の収支差額だけで団体の良否を決めず、変化の理由を質問として残すことが大切です。

貸借対照表は、決算日の残高を写したもの

貸借対照表は、決算日時点の資産、負債、正味財産または純資産を示します。一年間の収支ではなく、特定の日の状態を見る書類です。

現金預金や純資産が大きくても、その全額を新しい事業へ自由に使えるとは限りません。資産には、建物や有価証券などが含まれる場合があります。使い道が定められた財産が含まれている場合もあります。

したがって、現預金や純資産の総額を見て、希望事業の資金が十分だとも、不足しているとも断定できません。希望事業に対応する資産がどこに示されるかを、次の注記と面談で確かめます。

注記で、使い道と費用の分け方を確かめる

注記は、表だけでは分からない会計方針や内訳を補う説明です。使途を定められた資産や、複数の事業に共通する費用の分け方が書かれる場合があります。

旧基準の公益法人資料には「指定正味財産」、新基準の資料には「指定純資産」という名称が現れます。いずれも、寄附者など、財産を提供した人や組織が使い道を定めた財産に関係する区分です。

この残高を「余っている寄附金」や「今回の事業へ使える金額」とは考えません。誰がどの使途を定めたのか、残高はいくらか、いつ使う予定かを団体へ尋ねます。

注記で「配賦」という言葉を見かけることもあります。配賦とは、人件費、広報費、施設費など複数の事業に共通する費用を、決めた基準で各事業へ分けることです。どの基準で分けているかを確認し、管理費率の高低だけで優劣を決めないようにします。

公開のしかたは団体ごとに異なる

確認した三つの公式例でも、活動と財務情報のまとめ方は異なりました。以下は資料の探し方を比べるための例であり、団体の推薦や順位付けではありません。

公式例公開のしかた面談前に分けて見る点
大阪大学未来基金年度の活動報告と、基金設置時からの累計収支を掲載直近年度の活動と累計額を分け、希望事業が入る基金を尋ねる
日本科学技術振興財団事業報告と決算報告を別冊で掲載同じ年度をそろえ、希望事業に対応する会計区分や注記を尋ねる
ジャパンハート一冊の年次報告に活動と財務情報を掲載事業の説明と、活動計算書や事業別費用の対応を尋ねる

大阪大学未来基金の累計収支は、直近一年の収支とは期間が違います。日本科学技術振興財団では、事業報告と決算報告を同じ年度でそろえて読みます。ジャパンハートでは一冊の中にある活動の説明と財務情報を対応させます。

資料が一冊か別冊かよりも、希望する事業と数字がどの範囲で対応しているかが重要です。公開資料だけで対応が分からない部分を、面談で確かめます。

会計資料の数字を面談の質問へ変える

面談では、数字を見つけたこと自体を結論にしません。どの資料のどの数字から生じた疑問かを示すと、寄附担当者や経理担当者へ具体的に尋ねられます。

面談用の一枚には、資料名と年度、確認したページや数字、その数字から生じた質問を一組にして書きます。次の点から、候補団体に当てはまるものを残してください。

  • 今回の寄附を法律上受け取る法人と、会計上受け入れる基金・会計・事業はどこですか。
  • 最新の事業報告と財務資料では、希望する事業はどの箇所に示されていますか。
  • 使途を指定された寄附と、法人全体に使える寄附は、どの書類や注記で分かりますか。
  • 希望事業に関係する指定純資産・指定正味財産の残高と支出予定は、どこで確認できますか。
  • 活動量、収益、費用、資産が前年度から大きく変わった理由は何ですか。
  • 複数事業に共通する費用は、どの基準で配賦していますか。
  • 予定した事業を実施できない場合、誰が使途変更を決め、寄附者へどのように知らせますか。
  • 寄附が使われた後、どの報告書のどの項目、またはどの個別報告で確認できますか。

公開資料から分かるのは、過去の活動と財務の状態です。今回の寄附の受入先、使途、支出時期、変更手続、報告方法は、候補団体へ個別に確認する必要があります。

一次資料を最新版で確かめる

会計基準と各団体の公開資料は、2026年7月24日に確認しました。面談前には、団体の公式サイトで最新版へ差し替わっていないかを確かめてください。

面談前に一枚のメモを完成させる

最後に、最新の事業報告、期間の収支を示す書類、貸借対照表、注記を同じ年度でそろえます。各書類について「資料名と年度」「確認したページと数字」「面談で尋ねること」を一行ずつ書いてください。

その一枚を寄附担当者へ事前に共有し、会計に関する点は経理担当者にも確認できるかを尋ねます。公開資料と担当者の回答が同じ法人・基金・事業を指していることを確かめてから、寄附条件の相談へ進みましょう。