まとまった財産を公益に役立てたいと考えたとき、最初に決めたいのは「誰の判断による寄附にするか」です。生前寄附、遺贈、相続財産からの寄附では、財産が動く時期と、誰の寄附として扱うかが異なります。この違いは、紺綬褒章との関係や相談を始める時期にも影響します。

三つの方法は、寄附者として扱われる人が異なります

三つの方法は、財産が動く時期だけで分けると判断を誤りやすくなります。ご本人が渡すのか、遺言に基づいて死亡後に渡すのか、相続人が自分の判断で渡すのかを先に確かめます。

方法誰の寄附として考えるか相談を始める時期
生前寄附ご本人の寄附送金や名義変更の前
遺贈遺言を残した方による遺贈遺言書を作る前
相続財産からの寄附相続人本人の寄附相続後、申告期限を見ながら早めに

同じ財産でも、選ぶ方法によって確認先が変わります。税務上の有利不利だけを先に比べず、誰の意思をどの形で実現したいかを言葉にしてみてください。

生前寄附は、ご本人が内容を確かめて財産を渡す方法です

生前寄附は、ご本人が生きている間に、自分の名義で財産を渡す方法です。寄附先や使途を自分で確認し、寄附を受け入れる団体と相談しながら進められます。

内閣府の授与基準では、個人が公益のために私財を500万円以上寄附した場合、紺綬褒章の対象になり得ます。ただし、金額だけで受章が決まるわけではありません。対象となる寄附先への寄附であることに加え、推薦(関係府省などが候補を挙げる手続)と内閣府の審査があります。

ご自身の寄附として進めたい場合は、財産を渡す前の相談が大切です。寄附先の区分、返礼品、受入可能な財産、推薦の取扱いを受入先へ確認します。具体的な確認順は、500万円を寄附する前に確認することで説明しています。

遺贈は、遺言に基づいて死亡後に財産を渡す方法です

遺贈は、遺言によって、死亡後に財産を渡す方法です。生活資金を手元に残しながら、財産の行き先を本人が決めておきたい場合の選択肢になります。

遺贈の場合、ご本人へ紺綬褒章のメダルが渡るわけではありません。褒章条例には、表彰されるべき方が亡くなっている場合、遺族へ杯または褒状を授与して追賞する仕組みがあります。内閣府も、遺族追賞の基準を設けています。

遺贈をすれば追賞される、という意味ではありません。寄附先の対象区分、寄附額、推薦、審査を経る必要があります。遺言の有効性や遺留分(一定の相続人に保障される取り分)、債務の扱いも、個別に確認する事項です。

受入先によっては、財産の種類や使途の希望に対応できない場合があります。遺言書を書いたあとに受入れが難しいと分かる事態を避けるため、先に寄附先へ相談してください。遺贈寄附を遺言書へ書く前の確認事項では、相談時に伝える内容を詳しく確認できます。

相続財産からの寄附は、相続人自身が判断して行う方法です

相続財産からの寄附は、相続人が財産を受け取ったあと、自分の判断で行う寄附です。故人が生前に希望を伝えていても、遺言に基づく遺贈とは同じになりません。

東北大学と日本ユニセフ協会の公式案内では、相続財産から寄附した場合、相続人を寄附者とする申請になり、故人の遺族追賞にはならないと説明しています。これは二つの受入先に見られる案内です。すべての受入先で必要書類や推薦の取扱いが同じとは限りません。

国税庁には、相続で取得した財産を一定の寄附先へ寄附した場合の相続税の特例があります。特例を検討する場合は、原則として相続税の申告期限までに寄附を終える必要があります。通常の申告期限は、財産を残した方が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

対象となる寄附先や財産には条件があります。相続人本人が紺綬褒章の対象になるかも、寄附額だけでは決まりません。相続した財産を寄附するときの確認事項を読み、受入先と税務署または税理士へ早めに相談してください。

生前の意思表示だけでは、寄附を終えたことになりません

寄附の希望を家族や受入先へ伝えただけでは、財産の移転は完了していません。誰が実際に財産を渡したかによって、税務上の取扱いも変わることがあります。

国税庁には、寄附の手続中に本人が亡くなり、相続人が支払った事例があります。この事例では、所得税の寄附金控除を受ける人は、実際に支払った相続人とされています。

これは、示された事実関係に対する国税庁の回答です。すべての寄附や税目へ、そのまま当てはめることはできません。ただし、「生前に希望した人」と「実際に財産を渡した人」を分けて確認する必要があることは分かります。

ご本人の寄附として成立させたい場合は、意思を伝えるだけで止めず、受入先と実行時期を相談します。死亡後に財産を渡したい場合は、希望を口頭で残すだけではなく、遺言について法律の専門家へ相談する必要があります。

財産の種類と使途は、方法を決める前に受入先へ伝えます

寄附先が決まっていても、希望する財産をそのまま受け入れられるとは限りません。現金、不動産、有価証券など、財産の種類を具体的に伝えることが必要です。

不動産や有価証券などを現物のまま贈与または遺贈する場合は、譲渡所得等の扱いを確認する必要があります。譲渡所得等とは、財産の値上がり益などにかかる所得です。

国税庁は、一定の公益法人等への財産の贈与・遺贈について、譲渡所得等を非課税にするための承認申請を案内しています。租税特別措置法第40条に基づく手続です。適用の可否は、財産と寄附先ごとに確認しなければなりません。

京都大学の遺贈寄付相談センターのように、生前の寄附、遺贈、相続財産からの寄附を分けて相談できる受入先もあります。これは一つの受入例です。相談方法や受け入れられる財産が全国一律に決められているわけではありません。

受入先へは、予定する方法、財産の種類、おおよその金額、希望する使途を伝えます。そのうえで、受入れの可否と必要な手続を確認してください。

ご本人が残したい判断を基準に、一つの方法から相談します

方法を選ぶ入口は、誰が最終判断をするのかを決めることです。ご本人が寄附先と使途を確かめ、生前に財産を渡したい場合は、生前寄附を中心に考えます。

生活資金を残し、本人の遺言に従って死亡後に財産を渡したいなら、遺贈を中心に考えます。相続後に家族が寄附するかを決めるなら、相続財産からの寄附です。

どの方法が常に有利かは、公式資料だけでは決められません。財産の種類、家族関係、税額、受入先の運用によって判断が変わります。紺綬褒章の推薦可否や授与時期も、事前に保証されるものではありません。

まだ一つに決められない場合も、三つを同時に進める必要はありません。寄附先候補へ、現在比較している方法を伝えてください。

受入先から確認事項が分かったら、その内容を税理士や弁護士へ伝えます。そのうえで、ご自身に関わる税務と法務を相談してください。

公式情報の出典

制度と税務の記載は、次の公式情報を2026年7月14日に確認しました。受入先の案内は各団体の運用例であり、全国共通の手続ではありません。